DVDでじゅうぶんではなかった

映画観て唖然とした。ただただびっくりした。

何が?

ブレラン

いまさらのブレランだし、ファイナル・カットとか言っても、まあ完全版とかディレクターズカットとかいろいろ観てきましたし、驚きはもはやないだろう、何よりこういうパッケージの発売にともなって、イベント的にまた劇場でこれを観られるというのが幸福なことであってね、とかそのくらいにしか考えていなかったわけですが。

いや、これ、なんちゅうか、割と壮絶。洒落になってない。凄まじすぎる。

いままでのデジタルリマスターを見てきた感じで、まあ、フィルム傷とかね、あと当時の35mmフィルムの粒状性の限界から来るフィルムノイズとかね、そういうのはデジタルで取るだろう、とそれくらいにしか考えてなかったんですよ。最初のラッド・カンパニーのこの木何の木なロゴや、その後に続くタイトルとスタッフクレジットの文字とかが妙にくっきりぱっきりしているのを観たときもね、ああ、わざわざ作り直したんだな、くらいにしか思わなかったんです。

それがね、冒頭のLOS ANGELS,NOVENBER 2019の文字とともに、あの炎吹き上げる夜景が映し出された瞬間、度肝抜かれました。

DLP上映で、しかもそこそこ大きめのスクリーンで上映しているのに、なんか今の映画観てるみたい。画質がとにかく凄まじすぎる。35mmのマスター、しかも80年代のフィルムにこんな高解像な情報があったはずがない。あったはずがない情報が目の前にある。立ちまくるエッジ。タイレル社ピラミッドの星のような輝き、その壁面のテクノゴシックで微細なディテール。おかしい、こんなことできるはずがない。

いままで観てきたリマスターとは、明らかに次元が違う。ていうか、微妙に画像作ってるし。SWのリマスターみたいに。でもSWも当時のフィルムの解像度や色味を残さざるをえなかったのに対して、これは明らかにそういう匂いが抜けまくってる。完全に今画質。しかもDLPで画が立ちまくるくらいの。

この映画、特撮や合成用のカットのみ65mmで撮影していた(実写部は普通に35mmで、それを合成用に65mmにブローアップしただけ)のは知ってたけどね、これってどうなの?まさか幻の65mmから起こしたの?

画質というものに度肝抜かれたのは、今回がはじめてかもしれん。実は合成カットはかなりCGで手を入れていて、スピナーのヘッドライトのレンズフレアや、都市の空撮は、微妙にCGで細かいディテールを加えている。冒頭の炎吹き上げる夜景も、照り返しで微妙な煙突の細部が浮きあ上がるようになっていたり、CGでこっそり足されたエレメントは膨大。

ゾラの顔の差し替えとか、すでに報道されてる有名なの(いわゆる凡ミスリカバリー系)を別にすると、露骨に演出的なCGというのもあったりして、それはレプリカントの瞳に紅い(てかどっちかというとオレンジだけど)輝きを入れまくっていること。暗い場所でデッカードの瞳が赤く光る、というのはディレクターズ・カットでもあったけれど、今回はバッティにも、プリスにも、レイチェルにも、そしてなんとデッカードにも、くっきりはっきり、これ見よがしに赤く光っているのがわかるように変えている。これは本当に露骨な変更なのでちょっとそこらへんもびっくりした。

あと、ゆらゆらゆれ続けディレクターズカットでも"fucker"だった"I want more life..."は、なんと今回 "father" の方を採用。年を取ってパンクな気分は失せたかリドリー。というのは冗談ですが、それはともかくfatherも神話的な感じがしていいですね。「長生きしたいんだよ、おやじ」になっとります。ちなみに日本語字幕はいままでと同じバージョン。実はこ岡枝慎二訳は明らかな誤訳や抜け落ちが多くて、なっちがバキ打ちされるようなこともままある現代の字幕制作の水準からすると、お世辞にもいい字幕とは言えないんで、個人的には再訳してほしかったんですが、まあ仕方ありますまい。タイレル殺害シーンは「完全版」つまり目玉潰しバージョンを採用。しかし、なんとこのあと、セバスチャンに歩み寄るバッティのカットに「すまない、セバスチャン("I'm sorry Sebastian.")」というバッティの台詞が。なんとセバスチャンを殺す前に、謝りもしくは断りを入れているんです。

ハトの飛び立つ空の差し替えは、あまりうまくいってなかった印象。

それはともかく、これはとにかくすさまじい。音もかなり足されているし、臨場感という点では、いままでに体験したことのないものを見せ付けられた感じ。これは絶対にテレビやパソコンではわかならいし無理。劇場でDLPで見る価値がある。てかこれ観たらDVD観る意味あるのかってくらいの。それほどすさまじい。

いまさらブレードランナー、なんて侮っていたら、正直してやられた感じですよ。こんなに壮絶なものを見せ付けられるとは思ってなかったんで。

ブレランを観たことがあって、東京か大阪のDLP上映館で見られるところに住んでいるんだったら、見ておいたほうがいい。こんなにすさまじい代物であるにもかかわらず、これを逃したらこの環境で上映されることは、当分ないでしょうから。

ちなみに、押井さんの喋りつきのイベントでみたのだけれど、なぜか強力わかもとをおみやげに頂いた。今回のイベントのスポンサーだったのかしら。ひっぱりこんだ営業GJ。