マイアミ・バイス

・・・いや、確かに導入部のゲテモノ大口径狙撃銃は興奮した。いわゆる対物ライフルってやつ。ドルフ・ラングレンの「スナイパー」とか押井さんの「.50 Woman」に出てきたようなあれががっつんがっつん炸裂。ほら、「攻殻」でオトリの車を阻止線でスナイパーがドカドカ打ち抜く場面があったでしょ。あれが実写で見られるとは思わなんだですよ。セダンのボディを容赦なく抜く物理パワーのインパクトに、ガンマニアというほど銃に詳しくない私でも猛烈に痺れました。銃撃戦は概して充実しまくってます。最期の出撃前の準備はマイケル・マンならでは。銃撃戦周辺とにかく段取り多いよ!その銃器に対する過剰なフェティシュには大笑いしたくなります。冒頭の狙撃は近年の銃描写では大ヒットの部類に入りますですよ。

・・・ただ、このひと、ほんっと女性に興味がないんですね。脚本自体はコン・リー演じるカルテルの情婦兼ブレーンが大きな役割を果たすものの、どうにもとって付けた感が否めず、かといって「かっちょいい」と思った女性はヘッドショットをざくっと決めるとか、そういう「男前な魅力」においてかっちょいいのであって、いわゆる色気は(裸がたくさん出てくるにもかかわらず)ゼロです。

あと、これはHDで撮った威力か、夜の空がなんとも奇妙な映り方をしていた。強いて言えばマジック・アワーっぽいんだけど、なんつーか、紫橙に染まった夜の「雲」がはっきり見えるんですな。これがなんとも幻想的で、夏の湿気を感じさせてくれる。フィルムではこういうの見た事ないから、光量要らずなHDの特性だと思いますが。ほんとに妙な空なので、ここは一見の価値があるかも。ただ、HDのスタンプみたいな汚いブラーは相変わらず。背景が高速で横スクロールしたりするとツラいなあ。

基本的にダラダラした映画ですので、ガンマニア以外はあまりお薦めできません、かね。ディテールにおいてはかなりリアルな潜入捜査ものになっており、ストイックなんですが、そのストイックさがコン・リーと主人公の関係において齟齬をおこしている感じは否めません。そんなにやる気がないのなら、「HEAT」か「コラテラル」ぐらい女性要素を排除すればよかったんですが。逆に言えばガンマニアには大プッシュ、ってとこですかね。嫌いな映画じゃありません。むしろ好き。