亡国のイージス、という小説

最初に読んだとき、これなんかに似ているなと思った。それは「アビス」、といってもキャメロンの映画ではなく、オースン・スコット・カードのノベライズのほう。

これは「ノベライズ」といっても脚本をもとに撮影にもつきあいながらカードが書き上げたもので、その一部をエド・ハリスたちは読んで役づくりをしたほどであるから、ほとんどノベライズではない。カードとキャメロンの共作に近い。

どのへんが「アビス」みたいだったかというと、まず小説が主要登場人物3人の(本編前までの)人生を、それぞれに1章ずつ計3章つかって描き出してから、本編にはいるという構成(しかもそのうちの一人はブロックで人殺しをする)。これはかなり構造としては似ている。それと、地の文でもかまわず会話体で心理描写をして読者を引き付ける点。これをやると、異様にリーダビリティが高い、感情移入のカタマリのような小説が出来上がる。

最近知ったのだけれども、福井さんはキャメロンに人生を変えられたというほどのキャメロン好きで、「アビス」の映画がベスト・ムービーに入っていたそうな。だったら「アビス」のノベライズを読んでいても不思議じゃない気がする。