「Uボート 最後の決断」

「U571」の予告編って素晴らしく面白そうで(中略)「ローレライ」のお父さんとも言える存在なんです。厳密に言えば出来上がった本編ではなく、俺が予告を観て勝手に妄想した映画なんですけども。

(中略)

艦内にはドイツ軍の潜水艦乗りと連合国の奪取部隊。言葉も主義主張も、何よりも盗人のような軍人の風上にも置けない卑劣な泥棒野郎と誇り高きプロイセン軍人の末裔が狭い密室の中で対立しつつも窮地から脱出しようと協力しあう。連合国に助けを求めようとしても、外見はUボートだから敵だと思われるし、ドイツからはエニグマを葬るために撃沈命令が出てという具合になっているはずだと。海の中で見方からも敵からも狙われて、さあ、どうするという話だと思ったんで、そこがちょっと、というかだいぶ違う。

樋口真嗣ローレライ、浮上」講談社

これ、俺もまたく同じなんですが。俺も「U-571」の予告観ておんなじこと想像してたんですが。といっても「俺ってすごくね?樋口と同じこと考えてた?」と言いたいわけではなく、むしろこの「Uボート 最後の決断」によって、世界中で膨大な数の人間が「U-571」の予告を観てアメリカ人とドイツ人の望まざる共闘の映画を想像していたことが明るみになったわけです。

まんま。もう上の樋口真嗣の「俺U571」まんまな映画。ドラマ上の人減らしのため髄膜炎を導入する、というけったいな要素も付加されてますが。

最初は「アレクサンダー」観ようかと思ってたんですが、寝坊していい時間を過ぎてしまったので、急きょこっちを。見る前からわかっていたんですが、バジェット的にはビデオスルーギリギリ映画。予算が必要な場面は「U-571」や「ビロウ」からのフッテージ使い回しがほとんど。しかも駆逐艦とか出てくると、フィルムの画質が違い過ぎる「眼下の敵」のフッテージまで動員するという安さ。艦内のセットも微妙に予算のなさが見える感じです。

しかし、この映画、メイシーが主役だったりするのだ。ウィリアム・H・メイシー主演なのだ。しかも、メイシーがかっこいい男を演じていたりする。負け犬役がすっかり板についてしまったメイシーが部下の信頼篤い兵曹長を演じている。ケバい妻の前でカッコつけていたりする。

しかも、ドイツUボート側の副長はなんとなくリーアム・ニーソンに似ていると俺が勝手に思っているトーマス・クレッチマンだ。「戦場のピアニスト」でナチをやり、「U-571」でナチをやった彼が、またUボートに乗っているので軽いデジャヴが時々襲ってくる。「ゴッド・ディーバ」ではニコポルやってたね。

というわけで、出ている役者が渋い上に他映画からの使い回しフッテージがかなり炸裂するので、これがなんでビデオスルーじゃなかったのかほんとうに不思議なんですが、そのへんの安さに目を瞑れば、あのメイシーが大活躍したりカッコつけたりという変な映像がたくさん見れるので、楽しめます。中盤、メイシーの妻がエフェクトなしで突然艦内に登場する幻想シーンは、その安さもさる事ながら、いまこれを臆面もなくやるあまりの面の皮の厚さと唐突さにけっこうびっくりさせられました。

なかなか味わい深いUボート艦長役のティル・シュバイカー、どっかで観たことあるなあ、と思ったら「キング・アーサー」のサクソン人のパンクなヘアスタイルの息子役じゃないですか。