ヘルボーイの音声解説

 監督による音声解説というと

  • 撮影時の苦労話を語る
  • シーンの意図を語る
  • 撮影時の小咄を語る

というのがまあパターンっちゃパターンですな。つか、上にリスティングした以外に喋ることなんてあるんかいな。そうお思いの貴方。ヘルボーイのコメンタリーを聴いてご覧なさい。

こんなコメンタリーははじめてである。

樋口真嗣ピーター・ジャクソンウォシャウスキー弟。現在映画のクールエッジといえば疑いなくデブヲタのものであり、「ローレライ」がネットでは微妙な評価だったのは樋口真嗣がダイエットしたからだ、と俺は確信している。彼はデブのまま撮影に突入するべきであった。いまやクールな映画を撮るためにはデブオタでなければならない時代がやってきているのである。映画界を幽霊が歩いている。デブオタという幽霊である。俺も今デブオタであることを誇りに思いたい。思いたいんだ。思いたいんだが・・・。それは愛を得られぬ修羅の道。

そしてデル・トロである。彼もまた、デブオタである。ヒマンジーズである。そんな彼のオタク魂がコメンタリーで炸裂してしまった。撮影時の裏話濃度が限り無く低く、シーンについて解説する気もほとんどないらしい。では彼がなにについて語るかというと、それは自分の好きなもの

ジャック・カービーについて語るのは、まあミニョーラといえばカービーなのでアリだろう。前半はわりと律儀に撮影話を語ろうとしている。が、語りは徐々に脱線しはじめる。「シャドー」「ドク・サヴェージ」から連なるパルプヒーローの歴史からの影響を延々と語るデルトロ(カービーがフライシャー兄弟のところでアニメーターをしてたことがあるなんて、このコメンタリーで初めて知ったよ)。ジャック・カービーが後のアメコミにいかに大きな影響を与えたかを延々と語り、ときおり場面を解説するときは律儀にも「次の場面を語ってからカービーの話に戻ろう」などと話題を中断する断わりを入れる。そんな調子で、ラブクラフトについて語り、ボルヘスについて語り、オートマタへの偏愛について語り、地下道の魅力について語り、ホットメールのアドレスをコメンタリーで曝す(abe_sapienってアドレスいいな〜)。

要するに完全なヲタ会話である。

俺の好きなものを伝えたい。俺の好きなものはこんなに素晴らしいんだ。

というわけで、おそらくいままでの映画DVDで一番ナード度が高いであろうこのコメンタリー。クロエネンが「天使の声」を持つ美声の少年として名を馳せていた、とか登場人物ひとりひとりの来歴マンガもついております。