ヘルボーイ/妖蛆召喚

 原著で持っているのだけど、エーゴ苦手なので、微妙なニュアンスとかわからんし。

 衝撃を受けた。これは傑作ではないか。すくなくとも、いままでのヘルボーイでは一番の。

 ゴシック・ホラーといいつつ、いままでのヘルボーイは全然こわくなかった。けれど、この「妖蛆召喚」は違う。なんというか、いままでのヘルボーイからは一歩はみ出たイヤーなものが全編に漂っている。「ソドムの市」のあと、帰りの電車の中で一気に読んでしまったのだけど、妄想の力、怨み、という点では「ソドム〜」を越えているのじゃなかろか。物語が、設定が、という点から来るのではなく、ひたすら嫌なディテールが重ねられている。「首だけ男」クロンプトが見た虚無。屍体を載せて打ち上げられた宇宙船。ガスマスクを取ったあとの女の顔。そういう瞬間瞬間にこめられたものが嫌な感じだ。この「妖蛆召喚」には、いままでのヘルボーイにはなかった「死」の底知れぬ恐怖がぱっくりと口をあけている。良質のホラー映画が持つ、心地よい絶望が、さまざまな瞬間に宿っている。

 絵の魅力、民話的雰囲気の魅力、ゴシックの魅力、そうしたいままでのヘルボーイの魅力はある程度「枠」、了解されやすい形態に収まっていたように思う。が、この妖蛆召喚はそこをすこしはみ出た、「嫌な感じ」「死の臭い」を獲得している。

 これからヘルボーイがどこへいくのか、ちょっと面白くなってきた。