勝手邦題なら、さしずめ「あさって」とかつけられそうな映画

 すごいぞ、これ。どれくらいすごいかというと、ゴジラ2000ぐらいすごい。いや、もう面白すぎて何を書いても映画の香ばしさにはかなわないのだけど、とにかくすごい。ID4もゴジラも、それどころかユニソルもメじゃないエメリッヒ最強映画に認定。少なくとも2週間は友人との話のネタには困らないこと必至。

 要するにアメリカ版「日本沈没」なんですな。泣く子と地頭と天気には勝てないわけで、宇宙人をパワーブックで倒すという豪快な技を使ったことのあるエメリッヒも、天気を倒す方法は見つけられなかったようで、そういう意味では実に日本沈没なんだけど、出てくる人間かたっぱしからほうりっぱというのが凄すぎる。出てくるキャラ、要素、全部投げっぱなし。ある重要キャラが、元気だった次のカットで台詞だけで死んだことにされていたときにゃ腹抱えて笑ったよ。

 どこらへんがゴジラミレニアムくさいかというと、すべてがどうにかなったというかどうにもならなかったあとで、かなり手後れ気味かつ無意味に「環境破壊はいけない」というテレビ演説が入るあたり。いや、ミレゴジというよりは、セガールが大虐殺やらかしたあとネイティブのかっこうをして市民会館で「環境は大切です」などとのたまう「沈黙の要塞」に近いかもしれん。いや、しかし、この脱力具合を言葉で伝えるのはほとんど不可能だ。とにかく笑えるというポイントには事欠かない。わたしは一応、映画には映画の論理があり、それはかならずしも現実と対応している必要はない、リアリティ云々言うやつは馬鹿だ、そいつはフィクションのルールというある種の理性を理解し得ない原始人である、とつねづね主張しておりますが、この映画はリアリティとかそういうものとは一切関係ない場所において、自分の播いた種をかたっぱしから忘れていくと言う素敵な映画になっていて、ごめんなさい、とても面白すぎます。あのさ、キャシャーンってほんといい映画だと思うよ、これ見るとさ。

 映画が終わったあとに思うのは、すげえ多大量に人死んでるはずなんだけど、まるですごいことが起っているように見えないスケールがあるんだかないんだかわからん微妙なテイストとか、結局「何日間の話だかわかんない」というものすごい欠落。「何日の話だかわかんない」といっても、ハスミンがキルビルで書いていたような、あるいは青山真治が「アイズ・ワイド・シャット」について書いていたしょうな(最近流行りの)「(映画的な)無時間」とはまったく関係ない、単純に時間の説明すらも「投げっぱ」になってしまいましたすんません、というようなわからなさなのだ。

 ああ、言葉が貧弱だ。こんなもんではないのだ。シベ超とか北京原人とか言っている場合ではないくらい凄いのだ。とにかくここ数年では最大クラスの珍品。ネタに飢えている方は迷いなく劇場へ。

 個人的に一番笑ったのは、オオカミだな。オオカミ。