パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト

いや・・・なんかえらくどうでもいい扱いしかされてないので誉めにくいんですけど(笑)、なんと言ってもカイマー映画だしなあ・・・とか馬鹿にしていたら、すみません、つまらなかった皆さんに謝っておきますが、私これけっこう楽しかったです。最近の映画じゃ一番素直に(何も考えずに)楽しんでしまいましたよ。「カーズ」ですら、嫌なパターンの癒しがチラついて、一転の曇りなく、って具合には行かなかったんですけど(いや、もちろんそんなのはまったく傷でもなんでもないんですが)、ぼくたちが子供の頃、ブロックバスターに期待していたのって、こういう楽しさなのかなあ、ってちょっと思いました。カイマー映画なので当然、ものすごい勢いで何も残らない映画ですけど、それこそがもっとも原始的な「楽しさ」なのかしら、って。

これ見て思ったのは「アルマゲ」とか「ザ・ロック」みたいに、ヘボいサクリファイスで泣かせようとしなければ、カイマー映画ってけっこういいのかも、ということ。この映画は特に、あらゆる登場人物が自分の欲望に忠実に行動しているので、根本的なところでドタバタにしかならず、そこが見ていて気持ちいいというか、感情移入することなく、純粋に肉体がうごめくドタバタ劇を鑑賞できて大変清々しい。物語だけでなく、アクションも基本的にドタバタで、主要キャラそれぞれが手前のことしか考えずに画面を右往左往するさまは見ていて頬が弛んできましたよ。

ドラマが消滅したぶん、ガジェットの類いは最近なかったほど充実していて、フライング・ダッチマン(というネタを持ってきただけでもすでにオッケー)の回転式三連砲とか、デイヴィー・ジョーンズの弾く巨大オルガンとかは見ていてニコニコしてしまうし、この船は幽霊船なのでリアリティを無視してバカ潜水するのだけれど、その原潜よろしく海面を突き破って帆船が浮上する絵の壮大なバカさの興奮もさることながら、船長の位置の視点から急速潜行するカットは痺れるものがあります。このとき、原潜の副長よろしく「Dive, dive,dive」とdiveを律儀に連呼するあたりで大笑い。

あと管理社会萌えに繋がらなくもないツボとしては、敵が東インド会社ってのもナイスですね。漠然と大英帝国な前作よりは、こういう歴史上えげつないことやった巨大利益集団を出したほうが、ずっと業突くなコロニアルっぽさが出て大変よろしい。こういう冒険ファンタジーに、スパイスとして生臭ささを効かせるってのはエンタメとして雰囲気出しててオッケー。私掠勅許状とか、商行為と掠奪が未分化だった最後の時代を感じさせる単語に、無駄に興奮してしまう性質なので、そういうところもツボでした。

ちなみに私は、あれだけすごいことになっていても、ビル・ナイだ、とわかるのはすごい、というふうに思いましたですよ。ビル・ナイの他にもジョナサン・プライスとか、ステラン・スカルスガルドとか、まあちょっとだけだがジェフリー・ラッシュとか、いい顔のオッサン俳優が雁首揃えているあたりも、地味かつ無駄に豪華な感じを出していて、ホクホクするかも。しないかも。俺はした。

まるで印象に残らなかった前作よりは、ずっといいと思いましたですよ。ネタとガジェットとドタバタだけで幸せになれる人にはお薦め。俺ね。