認めたく無いものだな、若さゆえの過ちというものを

喉が痛い。鼻水が凄い。熱が出る。つまり風邪。 時あたかも21世紀初頭。つまり今。

癌以外の病気。

新鮮だ。

まるで大作映画ばかりみたあとに、久しぶりにゴダールの映画を見て「映画ってこうだよな」と、襟を正すような。

癌にかかずらっていたら、それ以外の病気をすっかりわすれていた。癌にかかると免疫力が増すというから、ひょっとしたら快報に向かっているというサインなのかもしれん。

たぶん昨日の、新宿はネイキッドロフトでの「NINを5.1で聴こう」ナイトでもらったものだろう。聴きに来ていたのはかわいい女性とゴスっぽい女の子と若い(かっこいい)男の子たちがほとんどで、私のようなスキンヘッドの眉無しのコンスタンティンファッション(えー、最近の私のデフォルトは黒ジャケ、白シャツ、黒ズボン、黒に白い縦ストライプが入ったネクタイでございます)の親爺変態には、ちょっとばかり精気が溢れ過ぎてなかなか肩身が狭かったです。

しかし、「Down in it」や「wish」、「head like a hole」といった、デビューしたてのころのPVは、予算の無さはともかくとして、その垢抜けてない具合がほとんど犯罪である。爆笑させてもらいましたことよ。

それがメジャーになった証なのか、あの人肉ミンチで有名な「Happiness in Slavery」のPVから俄然、映像のクオリティが上がる。というか、いきなり凄くなる。

在りし日のボブ・フラナガンが、ちんちんをむき出しにしながら、体にいろいろなものを刺されたりして苦痛によがりまくっている。知らないヒトノために書いておくと、彼は生前、SMアーティストとして有名だったお方で、自分の体にいろいろ凄いことをするパフォーマンスを表現にしていた。肉体が彼のメディアだったわけだけれど、それはふつーの意味での「表現」なんつー生易しいものを越えていた。なにせ、ちんちんに釘を刺したりしていたのである。ステラークもびっくりだ。

かれは、膵嚢胞性繊維症という、肺に膿が溜まる不治の病に侵され、医者には20までは生きないと言われた(で、40まで生きたが、同じ病を患っていた彼の妹さんは21で亡くなっている)。ジル・ドゥルーズが自殺したことからもわかるように、呼吸器系の病は本当にものすごい苦痛で(ぼくも喘息だからすこしだけわかる)、実存を模索する人生に行きやすいと言われるけれど、この人も「生=苦痛」という病の中で、自分の体を痛めつけることを表現にするという、誰も考え付かなかったことをやった。

というわけで、「happiness in slavery」という大傑作の次が、ロマネクの傑作「Closer」であるわけで(これ、最近出たロマネクのDVDに入っているらしいですけれど、女性器とかちんちんとかに修正入ってました?持ってる人教えてプリーズ)、NINのPVのクオリティはいきなり上がるわけですが、それ以前のはかなり微笑ましいというか、恥ずかしいと言うか。

しかし、ロマネクさん、「Closer」はいいのだけれど、「Perfect Drug」は明らかにイケてない。何といっても、ビデオ撮りしたかのように画質がぱっきりしてて安いし、トレントのゴスというのは、ほんまもんのゲイでないレイザーラモンのような、笑いすら誘うヘボいコスプレに見える。剣を持ってるところなど、冷静に見れる人がいるとは思えないくらい板についていない。

いやー、NINとゴスって相性悪いね(笑)

そして、これもはじめて聴いた、「Purest Feeling」というbootからの「Maybe Just Once」。

これわすごい。

なんつーか。「With Teeth」が暗黒脱出どころの騒ぎでは無い。80年代アイドルポップである。ほとんどCCBである(DEVOみたいだ、と書いている人もいた)。

なにせデビュー前。「プリティ・ヘイト・マシーン」の前に作ったデモテープだ。「ポップなのも入れとかねばならんべえ」と作ったのか、壮烈にイケてない無理くりポップ感が、NINにとっての悪夢というか、いやなんか倒錯しているんだけど無気味な明るさというか、80年代的ヘボさを纏っていて、腹を抱えて笑える。若かったんだネ、トレントも。ほとんど坂本龍一の作った演歌である。

さて、アーティストのデビューしたての時期のPVというのは、かなりツラい。いつか、いま一線で活躍し、80年代後期〜90年代初頭にデビューしたアーティストのPVを集めて観賞会をしてみたいと思うのだが、いかがでしょうか。けっこう和む催しになると思いますが。