なんとか風

 風呂で顔を洗っていたら、小指が右の鼻の穴にイントルード/まるで南斗水鳥拳のように伸ばされた俺の指先──確実に鼻腔の内側を切り裂く/鋭い痛み。
 思わず目を見開いた俺の目に飛び込んできたもの/膨れた腹/下腹部の懸架物/役立たずの脚/赤く染まったマットレス。血が止まらない──風呂場とあってティッシュなどない。だらだらとだだ漏れにになる俺の体液/エッセンス/アスホールな気分/ガッデム。そして次の苦難が俺を襲う──石鹸が眼球に接触──石鹸の界面活性成分が眼球表面を潤す油とコンフリクト──苦痛/苦痛/苦痛──目を開けていられず即座に遮蔽/風呂桶から湯をひとすくい──洗浄/洗浄/洗浄──そうしている間にも鼻腔から流れ出るのが感ぜられる俺のエッセンス──まるでパンチラを見た少年漫画の主人公のよう/空虚な80年代の──ただし最後に見た風景は己の一物──ファック。
 とめどなく流れる血。恥知らずにも止まる気配ゼロ。糞ったれな鼻粘膜。顔の石鹸を洗い流すとさらに止まらず──大出血。手で鼻を押さえる──あっというまに真っ赤に染まる俺の手のひら。まるで星条旗アメリカが清らかだったことは一度もない。なんだかよくわからないがそういうこと。
 床を濡らしながら全裸でリビングへ──ティッシュを濡れた手で引き出すと水分をあっという間に吸い込んで使い物にならず/破棄。タオルで手をぬぐうとべったりと赤く染まる──まるで誰かをたっぷりぶち殺した後のよう──そして再びティッシュの箱に再トライ/今度は乾燥した紙をキャプチャ/即座に丸めて鼻に挿入/鼻にティッシュ入れている全裸の俺──ファック。