喰えるのか?それ。

アップルのiMac G5欲しい!」(監督:デイビッド・フィンチャー

序盤からiMacの周囲をぐるぐるまわるオープニングに痺れる。これはNINのPV「only」で試みた映像の実践だけれど、さすがフィンチャー、映画でもクールである。

3たび組んだブラッド・ピット演じる主人公は「アップルのiMac G5欲しい!」とiMacを追い求めるハーレムの住人。要するにまあ、聖杯探求譚である。追い求めるのがポップカルチャーの権化であるG5であるあたり、「ベッカムに恋して」に似ている、と言えなくもない。鈴木清順は「東京流れ者」の中で何回あの「東京流れ者」を歌えるか、という実験を試みたけれど、さしずめこの映画は劇中で主人公に(いかに自然に)「アップルのiMac G5欲しい!」と言わせる実験、と言えるかもしれない。2回見て数えてみたけれど、ぼくがわかったかぎりこの映画でブラピは「アップルのiMac G5欲しい!」と38回叫んでいる。友人のラスタファリアンがラスタの言葉でG5うんたら言っていたような気もするし、この映画にはロシア人の武器商人や人民解放軍のスパイやらが出てきて、それぞれがそれぞれの国の言葉で「アップルのiMac G5欲しい!」と言っている、というお遊びも入っているので、劇中で何回「アップルのiMac G5欲しい!」と言われたかを計測するには、そうとうな根気と知識が必要になるだろうなあ。ぼくには無理ですけど。

ところで、題名が「アップルのiMac G5欲しい!」なので、この映画の悪役は当然・・・「ミクロソフト」である。この映画は、サイコドクター風野さん命名するところの「ゲイツ映画」でもあるのです。ゲイツ映画、とは、ビル・ゲイツみたいな人が悪役の映画、を総称する映画の一ジャンルで(笑)、「シックス・デイ」「タイムライン」「ザ・インターネット」「サベイランス〜監視」などといった映画がこれにあたる。この映画でビル相当の人間を演じているのがティルダ・スウィントンというのが新しいところ。タートルネックのセーターを着た、ゲイツそのもののカジュアルファッションなCEOが、あの髪型で中性的な魅力を放っている、というのは、なかなかに悪い冗談のような映像ではある。

とまあ、あまり中身のない映画ではありますが、フィンチャーらしくエンディングでは、びっくりのオチが待っています。やっと手に入れたiMacのCPUが、実はインテルだったなんて、実にフィンチャーらしい悪意に満ちたジョークではありませんか。