ステルス

「ドミノ」の恍惚の後5分後(予告無し)から見始めたんで、まるで印象に残っていないんですが、思い出しながら書きます。がんばります。

まず、各所で言われている「素でチームアメリカ」な展開ですが、なにしろロブ・コーエンなので、頭悪い人に頭悪言いうてもなんも面白くないわけです。スキだらけの人にツッコむほど労力対効果の少ない芸はありません。これがジョン・ミリアスならまだ「喘息でベトナムにいけなかったルサンチマンゆえの鬱屈した知性=知的ウヨ」を感じさせてくれるのですが、なにしろロブ・コーエンなのでどうしようもないです。話はといえば、北朝鮮よりもEDIたんよりも、単純にサム・シェパード演じる将官の初期段階における馬鹿判断の異常な連続が原因なので、国境侵犯&放射能汚染を除けば、特定の悪役がいない、妙な意味でバランスのとれた脚本になっています。「将官がバカだったからマズいことになった」という物語構造は、奇しくも同じサム・シェパードが実在のガリソンUSSOCOM少将を演じた「ブラックホーク・ダウン」を彷佛とさせますが、この将官が腹を括って悪役化したかと思うと、後悔して自決したりするので、腹の括り方に疑問を感じざるをえず、結果としてえらく意志薄弱将官に見えてしまって、これはこれで笑えます。

アニメ、という意見もよく見かけますが、確かにこれ、アニメです。てか元ネタはマクロスプラス雪風でしょう。明らかに。

原作雪風@レムばりの実存→GONZOによる劣化雪風アニメ@山下いくとdesignedメイヴ→ロブ・コーエン見てヒーハァー→ステルス

こういうミームの伝達があった、のは間違いないところでしょう。日本人ですら人と機械の関係を通して、言語とコミュニケーションのぞっとする地平を見せてくれた雪風を、正しくアニメにすることができなかったのですから、そのまがいものを見てさらなる劣化コピーを作ったロブ・コーエンを誰が責められましょう。タイでパイロットたちがバカンスを楽しむ場面は、一瞬「沈黙の聖戦」が激しくデジャブして、いつセガールが出てくるかと思うとドキドキしましたが(特に滝の場面が聖戦度高し)、そういうことにはならなかったので、ほっとしました。

しかし、国境に触っている(金網です)とはいえ、「向こう側」にいる主人公たちが
国境侵犯している海軍機を見て
「味方だ 味方だ」
と2度も繰り返し(2回字幕に出てました)
「よかった」
とはなかなか凄い台詞です。

関係ないですが、前からものすごく気になっているんですが、アメリカ映画における北朝鮮/韓国国境・非武装地帯の描写は、なぜこうもラグビーやアメフトを想起させてしまうのでしょうか。筒井の「万永元年のラグビー(これ、ひどい話です)」ではありませんが、非武装地帯の突破という状況を描写するとき、この「10ヤードファイト化する」罠から逃れられた映画はいまだにひとつもありません(本場韓国映画は別ですが)。非武装地帯や国境は、その構造上どうしてもラグビー化してしまう恐ろしい罠が待ち構えているので、そもそもこれを描写しようと思うのが間違いです。

話題の「MIRV弾頭を牛車で輸送@タジキスタン」ですが、期待していたわりにけっこうリアリティのある風景で、笑おうと構えてはいたのですが、その「これ、LIC的にアリかも」と、むしろ感心してしまいました。不覚。

ちなみに、予告編のドーナツ爆発が「すわ爆導索か!」と0083ファンは嬉しかったのですが(トミーノ御大の喋り場ガンダムは好きじゃないので)、本編を見てみたらがっかりしました。なんだ、そういうことかい。ただ、あの強烈にフィクション度の高い静止軌道無人給油機は、ここも不覚ですが萌えてしまいました。