ザ・ウルトラマン

「ボーズの○○タイム」のvol.2を昼休みに渋谷のTSUTAYAまで買いにいったとき、そこに置いてあった映画のチラシをふと見やると、ハンターの「極大射程」の映画化である"Shooter"のチラシが置いてあって、そこではじめてこの映画の邦題が「ザ・シューター/極大射程」になったことを知った。

http://www.shooter-movie.jp/

音楽はマンシーナだ。ハリー=グレッグソン・ウィリアムズ、スティーブ・ジャブロンスキーと並んで、ジマー組の中では比較的印象に残るスコアを書いている人で、ぼくはこの人の「ツイスター」の景気のいいスコアが大好きなんですな。マンシーナを聴き始めたのは多くに漏れず「スピード」のスコア盤から。本編はともかく(失礼)「Blood+」のスコアは燃えサントラリストの中でも結構上位に入ります。ジマー組でいまでもフォローしてるのはハリー・グレッグソンとマンシーナだけっす。ちなみにハリー=グレッグソンの「デジャヴ」、最初ちゃんとサントラ出る予定だったのに、(映画がコケたからか)発売予定なくなってやんの!メリケンiTune専売になってやんの!日本のiTuneアカウント使えないでやんの!日本のクレジットカードじゃUSアカウントつくれないでやんの!日本のiTuneカードも使えないでやんの!ダム!メルド!そういうわけで、USiTuneカードを買ってアカウント作って買いましたよ。めんどくせえ。これから売れないサントラはどんどんiTune専売の刑に処されて日本のサントラ聴きは歯を噛み噛み耐えるしかなくなるわけですか。スコアを聴く人間には辛い時代やのう。デビッド・アーノルドの「カジン・ロワイヤル」には「完全版」のサントラがあって、それもメリケンiTuneにしかないときた。CDなら輸入すればいいけど、デジタルでディバイドされるとどうしようもない。トホホ。

とかいうのはわりかし余談で、タイトルが「ザ・シューター」になったのは「イリュージョンVS」とかに比べれば喜ばしいことである。どうせならみなフィンチャーみたいに、原題の時点で日本人に気を使ったタイトルにしてくれたらいいのに。「セブン」「ゲーム」。見事なまでに翻訳の必要なし。ファイトでクラブ、パニックなルーム。男らしい。間違っても「戦争のはらわた」とか「ゾンゲリア」とか「バタリアン」とか付けられる心配はない。いやバタリアンとかは結果オーライだけれども。「イリュージョンVS」ってもしかしたら東宝東和イズムがGAGAに受け継がれたことの証しだったのかしら。ちょっと残念だ。とにかく、予定されているフィンチャーの次回作「The Curious Case of Benjamin Button」もきっと土壇場で清々しいくらいシンプルな題名に変えてくれるはずだ。信じてるぜ、フィンチャー。「70歳の老人のような姿で生まれ、成長するにつれて若返っていく男性」の話らしいから、きっとタイトルは「Old Boy」あたりで落ち着くんじゃないかな。

しかし「極大射程」、本の原題は「Point of Impact」なんだよな。なんで「Shooter」になったのかしら。で、ふと思ったんですが、この「ザ」。いや別に文句があるわけではなくて、なんで日本人は「ザ」を付けるのか、ということをちょっと思ったわけです。「ザ・インターネット(はまあ、原題が「the net」でしたが)」とか「ザ・シークレットサービス」とか。この「Shooter」については、原題についていない「ザ」をわざわざ付けているからには、それなりの効果を期待しているわけです。逆に「The Untouchables」のように原題に「ザ(つーか「ジ」ですかこの場合)」がついていても邦題では取ってしまう例も存在し、このことからもこの「ザ」というのが、ある程度の言語的効果を日本人に与えていることがわかります。

allcinemaで「ザ」からはじまる映画を50年代から検索していくと、モンゴメリー・クリフトが出てる「ザ・スパイ(1966)」が一番古い。しかし、キネ旬DBで調べると「ザ・ガードマン 東京用心棒(1965)」がひっかかる。「ザ・ガードマン」劇場版。ということは題名に「ザ」を付けるのは「ザ・ガードマン」は発祥なのか。ちなみに「ガードマン」は和製英語だったりする。ガードマンという和製英語に付けられた「ザ」。つまり映画題名としての「ザ」は最初から原題の発音としてではなく、和製英語としてあったということになる。「ザ」はその最初から英語とは切り離されたバッタモン感を漂わせていた。

いまふと思いついただけなので、「ザ」の歴史がどこからはじまったのか、「ザ」が日本人にとってどのようなインパクトを持っているのか、これから考えます。「ザ」付き題名について、もっと遡れるかたがいらっしゃいましたら、教えてくださいませ。