宇宙戦争を買う

宇宙戦争」が最悪、というひとは、たぶん現実に打ちのめされたことがないひとなんじゃないか、と思えてきた。世の中がデタラメで圧倒的で辻褄が会わない場所だ、とはあまり思っていなくて、戦えばなんとかなるんだ、むしろ戦うべきなんだ、とか、物事には理屈があるんだ、とか、思いもよらないことなんて起こらないんだ、とものすごい安心しながら生きているんだろう。たぶん、ヒトが無力であることに耐えられないんだろう。わけのわからないことが嫌いなんだろう。

そういう大人にならないためにも、SFは若いうちに読んでおいたほうがいい、と最近真剣に思うようになってきた。情操教育にSF。冗談のような話だけれども。

この世の中がまったく理不尽な場所であること。それについてぼくは、あなたは、どうしようもないこと。それを知ること。

本田美奈子の死と、宇宙戦争という映画は、ぼくのからだに起きた理不尽なできごとを経由して繋がっている。あなたは、体と心中するしかない。叙事的な映画というのは、そういうことを嫌でも感じさせてくれる。

あれは、容赦ない。あれは、人を選ばない。あれは、突然やってくる。できごとというのは、そういうものだ。

死んだことのある人はいない、と誰かが言っていた。