ソクーロフ

「太陽」が紹介されたおかげで、奇妙な注目が集まってしまっているソクーロフさんですが、学生時代から見てきたソクーロフの映画というのはもっと、こう、なんというか、もやもやしていて、夢のようで、実際爆睡してしまうのだけれども、とにかくそういう作家であるので、こういうふうに政治的な話題で注目を集めてしまうと、なんかちがうなあ、という思いがなくもない(いや、「太陽」はいい映画ですよ。ベルヒデスガーデンのヒトラーさんを描いた「モレク神」と併せてみるといいですね。「最期の12日間」なんかよりよっぽど好きです)。

ちなみに、私がいちばん好きなソクーロフの映画は「静かなる一頁」だ。

というわけで「ヒトラーのためのソナタ」という未見の作品(7分しかないけど)がやっているので、ユーロスペースに行ってきた。この日上映されていたのは「ヒトラーのためのソナタ」と「ペテルブルグ・エレジー」の2本。「ペテルブルグ・エレジー」は監視カメラのようなものすごい長回しがあって、ごめんなさい、眠ってしまいました。この映画は歌手のシャリアピンさん(タマネギが怒濤のように乗っているシャリアピンステーキシャリアピンさんですな)の息子さんたちを取材(というかなんというか)したドキュメンタリー、ではあるのですが、とにかくその長回しが、事実だとかフィクションだとか、そういう境界をもやもやとガスのようなものに還元してしまって「映画」としかいいようのない状態が現出しているのがおもしろかったです。眠いけど。

ヒトラーのためのソナタ」は短いながらも、ものすごく怖い映画でした。ナチスの記録フィルムはほとんどホラー映画であることを実証した一品。