オタとしてのスピルバーグ

 実は、このオッサンが怪獣映画に興味があるなどとは、考えたことがなかったのだ。そりゃ、ゴジラぐらいは見ているだろうけど、この人の映画って「サブカルっぽいものへの愛着」を感じたことがなかったんですわ。

 この人がWWIIヲタで飛行機ヲタあることは「1941」の前からわかっていたことで、クラシックな戦争マニア、現代戦にはあんまり関心のない類いの戦争ヲタなことは確実なわけです。てか、今回の宇宙戦争で軍隊が活躍しているシーン、戦車とかヘリとかは現代のものなのに、なんかクラッシックで、私にはどうにも現代戦というよりWWIIにしか見えない。

 それ以前からやっていたのかも知れませんが、たとえば「マイノリティ・リポート」に登場する偽ID「ヤカモト氏」はもちろんパイソンズの「偽ヴィスコンティの日本人」からとられたもので、このとき私は「こういう元ネタギャグって、なんだかスピルバーグらしくねえなあ」と思ったのでありました。スピのヲタ関心領域とは違うような気がしたんです。「マイノリティ〜」が東京国際映画祭に出品されて来日したときのインタビューで、パイソンネタを喋っていたので、真正パイソニアンの可能性はあります(まあ、向こうでは基礎教養、という可能性もあるのですが、しかしやはり『目玉ギャグ』はパイソンっぽい)。

 そして今回、スピは「怪獣映画」という私は正直予想していなかった(というか、勝手に「スピの趣味じゃねえだろう」と思い込んでいた)引き出しを開けてきたわけです。今回、スピは来日したとき「大阪はガメラをはじめ、いろいろな日本のモンスターを倒している経験豊富な場所だ」と語った、というニュースが流れましたが、これ実はスピルバーグガメラではなく「ゴモラ」と言っているのに、怪獣の素養のなかった記者(ガイジンに自国文化を教えられることの切なさよ)が「ガメラ」と書いた、という説もあり、そうなるとこのおっさんの引き出しはほんと恐ろしいことになっているわけですが、この歳になってこういう引き出しを見せてくるのがなんか底しれない、というか無気味です。