てにぷり

「すみません、大人一人、11時のテニプリ
 と言ってしまってから後悔した。若者はともかく目の前の券売所の女性は20代前半、「テニプリ」なんてオタ臭い略称で通じるものか。テニプリという略称はどの程度一般化しているのか。最近の若者のことはよくわからんので、俺には判断しようがない。しかし社会的ペルソナをわきまえた大人としては、慎重に「テニスの王子様」ときちんと言うべきではなかったのか。まるでオタクではないか。いや、オタクはオタクなんだが、相手の語彙体系を尊重しない非常識なオタクみたいだ、と言いたいのだ。いや、そもそもこんなオヤジがテニプリを観に映画館に来ることが間違っているというのか。その通りだろう。劇場内は見事なまでに少年少女、女子中学生、そして俺より年齢がぐっと上がる女性だけの数人単位のグループいわゆる腐女子の人というやつでいっぱいだ。小学生の少年とお父さんたちを除けば、スタンドアローンなコンプレックスに苛まれながらも劇場にやってきた成人男性は俺一人ではないか。こうして周囲を子供と女子中学生に囲まれて黒いシャツを着た俺がぽつんと座っている様はまるで変質者だ。

 さて、映画だが評判にたがわず非常に面白かった。後半に突入してからはもう笑いっぱなしの暴走ぶりで、いや、年始の朝にやってた試合シーンばっか集めた総集編を観たときからなんだか物凄いアニメだ、と感心していたのだけど、劇場版ではかつての今川演出を思わせる非常識な技の応酬に、一瞬たりとも退屈させられることはなかった。宇宙が炸裂し、恐竜は滅び、キノコ雲は上がり、果ては空中で雌雄を決する主人公とその敵である兄。いや、ひさしぶりに笑いっぱなしでした。終わってみてから主人公たちがまだ中学生であるという設定を思い出して腰が抜けますが。

 しかし、美術監督が平田秀一、撮影が江面久、原画に沖浦竹内うつのみやetc、とがっつりイノセンス組なクレジットを見て、単にI.Gが作っているという以上のスタッフの充実ぶりも面白すぎる。これじゃまるで裏イノセンスだ。

 という映画のあと呪怨を観たんですが、テニプリで非常に愉快な気分になっていたので、なんだかコメディ映画にしか見えない。というか、家、おまえペース早すぎ。映画が始まってすぐあの役者がああいうことになってしまって、おいおいまだ3分経ってねえぞ、と爆笑。さらにオープニングクレジットの最後、清水さんのクレジットが出るタイミングも面白すぎる。今回の家は大食いだなあ。ピッチ早いよ。さすがアメリカ資本。ヤケクソ気味に人が次から次へと餌食になっていくので、あまり怖がっている暇がないんです。とにかくペースが早い。さすがに肉食の国、家も大食いだ。