スカイ・クロラ観てきた
ビューティフル・ドリーマーSIDE-B。
「予感」だけが圧倒的にのしかかりつつ、淡々と繰り返される日常。
つまりいつもの押井映画。
エンディングが押井のコントロール下にない歌物、というのは押井的に「愛はブーメラン」以来、という意味でもうる星2裏面。
(「イノセンス」の「Follow Me」があるじゃねーか、という貴方は甘い。あれは確かに鈴木敏夫が持ってきたものだが、わざわざ川井憲次に編曲させて新録しているのだから、押井的なコントロール下にある。)
BDでは「愛はブーメラン」ののち、引いた校舎の画に日常を告げる鐘の音が鳴る。あの鐘の音がm「スカイ・クロラ」に於いてはエンディング後の具体的なシークエンスに相当する。逆に言えば、スカイ・クロラのスタッフロール後のシークエンスを、鐘の音一つに省力化したのがBDだったのだとも。
ラムという壮絶な非日常があっというまに日常に回収されてテレビシリーズが展開していった果てにBDがあったのだとしたら、ここではリアルな非日常の最たる物である「戦争」が、繰り返される喪の仕事を準備するための日常でしかない。
「ハレ」がBDだとしたら、「ケ」は「スカイ・クロラ」だ。「学園祭」そのものもあるにはあり、それはこちらの期待通りに尻切れトンボのうやむやに終わる。
だがいったん「予感」が濃密になり始めるとそれはもう否応なくこちらの涙腺を刺激してくるわけで、唐突に何もかもが赦される抱擁を経て、最後に飛翔する場面ではその予感が最高に濃くなり、何となくこみ上げてくるものも、それなりにある。
スタッフロールの後、想定されうる繰り返しの邂逅が描かれ、そこには日常を引き受けた者の覚悟がある。「それは夢だ、それは夢だよ」BDにおいてそのひと言で退けられた世界がいざ日常と化したとき、我々はなにが出来るのか。無限を引き受けること。その表情を描いて、映画は終わる。
意外なことに画面を見ると菊池さんも加瀬さんも違和感なしで驚き。
谷原&栗山が声優として段違いに上手いのは確かなんですが、それにしても菊池&加瀬は予想を完全に裏切ってあっという間に気にならなくなった。
しかし兵藤まこ様がだれ演っているのか最後までわからんかったが、よりにもよってあのキャラとは。
ちなみに、わかりやすさもBD級。原作読んでなくて前情報無いわたしですっぱりすっきり状況と設定が過不足無くわかる押井映画っていったら攻殻以来?これでもわからないという人のリテラシーはちょっと救いようがないのでフォローしなくてもいいとは想うけれど、やはりこれだけやっても零れる人はいるんだろうなあという諦観も抱かざるを得ない微妙な感じもやや残る。