惑星大怪獣ネガドン

コミックウェーブ後援(?)の個人制作作品(「ほしのこえ」「雲の向こう〜」以来このかた、自主制作との境界がかぎりなく曖昧なので、なんと形容していいのかわからない。「ほとんどを個人で制作した作品」と言うしかない)、ネガドン。期待は勿論しておりました。驚愕のCGクオリティや、昭和に生産された怪獣映画群の手触りなど、予告編から見ることのできる映像の指向はツボにジャストヒットでした。

しかし、

正直に申し上げましょう。私、本編を見る前はこの作品、「イロモノ」ではないかと思っていたのです。ここでいう「イロモノ」とは通常そうであるような否定的な意味(だけ)では決してなく、しかしこの種の「正しく」趣味に走ったもの、非商業作家が自らの欲望に忠実に、それを(様々な困難に耐えて)貫き通したもの、は大抵イロモノであります。もちろん、我々「一部の人間」はそのほとばしる愛とそれゆえの作品としての歪みを愛するものであり、通常はイロモノ万歳なのですが、それはすなわち、「フツーの」人様に見せるにはあまりに素人臭かったり、間口が狭かったりするものなのです。

そんな「自主映画群を普通に見てきて、個人制作ものに関するある種の心構えができてしまった」状態で本編を見た私。

すみません。

これ、普通に面白いです。「心構え」なんて余計なおせっかいでした。 なにせ、これ、

泣けますから。

普通にいい話ですから。 デパートの屋上、アドバルーン、扇風機、ブラウン管、と怒濤のように登場する昭和ディテール群は確かに趣味丸出しの、好き者の魂を突く「昭和という異世界」なのですが、そんな趣味性と「30分」枠できっちり「いい話」をやる丁寧さが見事に共存しております。

作家性(というよりここではあえて「趣味性」と呼びたい)を薄めることなく、泣かせ、そのうえギャグも複数回入れ(怪獣の予想進路報道が東京都地図版台風の進路になっていたのには爆笑)、という離れ業。そのぶんお話としては陳腐で紋きりと言われる危険も孕んではいますが、少なくとも「ほしのこえ」には「笑い」はなかった。ギャグも入れ、泣かせ、趣味丸出し、というのは、信じられないような達成と言えるでしょう(また、笑っていいのか燃えていいのか判断に迷う名言多し。「この下等生物が!」とか)。誰かに薦めたくてたまらなかったので、一緒にファンタで映画を見た、Kさんに「傑作、池袋で見るべし」と推薦しておきました。小島監督も見てくれるといいなあ。

監督の方の経歴を見たら、マリンポストとかで仕事してた方なのね。新海誠さんもゲーム会社にいたし、やっぱりそういう素地がないとこういうクオリティのものは難しいわな。

趣味だけの作品ではない「惑星大怪獣ネガドン」。
傑作、と断言してしませう(主人公の芹沢な学者の声優さんは明らかに声が老いてなくて、ちょっと気になったけど)。

公式サイト
http://www.h2.dion.ne.jp/~magara/project.html