ミリタリーゴシック

海外の方から白い目で見られる我が国のコスプレ趣味、ナチ制服、がある。

うる星やつら2:ビューティフル・ドリーマーの「海外版」DVDには、日本の物とはまったく別に、独自に録りおろした押井コメンタリーが入っているのだけれど、アメリカ人(と思われる)インタビュアーは予想通りというか、「純喫茶 第三帝国」に付いて意図を聞いていた(押井さんは『ドイツ軍装が好きなスタッフが〜』などと、ナチと国防軍を巧みにすり替えてミリタリー趣味的返答をしていた)。

ナチの制服かっこいい、というのはしかし、果たしてミリタリー趣味なのだろうか。

軍、とは言わない。しかし最近、軍人でなくとも公権力を振りかざす立場のキャラクターたちの制服趣味(ハガレンのコートもそうだ)というのが多くなってきた気がする。そこに権力への欲望が潜んでいるとかそういうアホなことは言うまい。思ったのは、ハガレンのコスとナチコスの間には似たようなカッコよさが横たわっているのではないか、ということだ。それは、軍事的、政治的な匂いを発散しつつも、明らかにミリタリー趣味ではない。軍事的な知識を二次的にした軍事趣味、政治的な意識を抜きにしたファッショ趣味。

そこでふと思ったのだ。それらは、ミリオタのコスプレ(ミリコス)とは微妙にズレた美意識の領域から行われるコスプレだったのではないか、と。軍事や政治の暗部から発するカッコよさに基づいたファッションとして行われているのだろう、と。これらの制服趣味は一般に、ミリタリー趣味といっしょくたにされてきた。しかし、なんとなく純粋な軍事コスとは違うものがある領域が、昔からナチのコスプレにはあったのではないか。ある種の「タブー」に触れる感触が。

私はコスプレには興味がないので、上の文章は完全に傍観者の妄想に過ぎませんが、とするなら、ナチ趣味というのはミリタリーというよりも「ミリタリーゴシック」とか「ポリティカルゴシック(うーん、おさまり悪いなあ)」とか呼ぶべき領域なのではないかしら。ゴスロリに倣うなら「ゴスミリ」「軍ゴス」「ポリゴス」とか略してもいいかも。ガスマスク趣味とかも含まれるんじゃないかね、この領域に。

と、コスプレを例にとってみたけれど、表現の領域においても、ドイツ軍装を基にしたプロテクトギアなんかはかなり「ゴス寄り」の架空ミリタリーだと思うし、「ローレライ」のパウラスーツなんかもそういう系譜に入れていいような気がする。軍事ファンタジーとでもいうべきスタイル。そんなことを考えたのは、なんだかドイツっぽい架空世界の軍事漫画が最近多いような気がして(「パンプキン・シザーズ」とか「Red Eyes」とか)、こういう「軍事ファンタジー」ってなんなのかね、といろいろ考えていたからなのだ。

まあ、当然ですがはっきり線引きできる話ではないのですが、「美意識」寄りの軍事趣味というのがあって、単純に「ミリタリーゴシック」という言葉を思いついただけの話でした。押井が「チャイニーズゴシックとか「イノセンス」で言ってから、なんか「ゴシック」って単語、ユルく使えるいい言葉のような気がして。

今日の日記、全部漫画の話だったな。