甥アディクション

生まれた。妹は憔悴しきっていた。
2200グラム。小さい。
最近の帝王切開は横に切るらしい。そうすると、ビキニを着ても隠れるからとか。

誰に似てるとか似てないとか最初に言い出す奴は誰なのかしら、と期待していたのだけれど、場にいた誰もそんなことは言わなかった。

「正直、この顔じゃ判断つかないよねえ」
「ほんとに」

よくある、俺に私に似てる似てない、にいつも胡散臭さを感じていた私としては、自分の母が聡明かつ正直な感想を言ってくれたことにほっとした。あの、誕生直後のプリミティヴなパーツの造作でそんなゲシュタルトを結べるのはよほどのドリーマーだけだ。だが人は血縁という幻想を基に更なるファンタジーを容易に再生産することができる。だからこその甥姪貢ぎであり、似てる似てないなのだ。「それこそが問題だったのですっ」と室戸文明@御先祖も言っておる。

かわいくも、かわいくなくもない。
これからかわいくなるのだろう。たぶん。
かわいくなる予感だけはたっぷり纏っている。
うらやましいことだ。

ところで、私の周辺にいる連中のことごとくが甥中毒と化し、日々遣唐使のごとく献上品のセレクトに余念がない。子供なんて、ケッ、とか言っていた連中までもがである。

自分はどうなるのだろう。いまから恐ろしい。