刺青(タトゥー)あり

ひこうきとふねとせんしゃ。子供にどれに乗りたいと訊いたら、前述の順番に答えるだろう。たぶん。

というわけで子供であるぼくは航空自衛隊入間基地の航空祭に行って来ました。

というかすごい人。コミケもかくやという人地獄。子連れの夫婦やおじいさんおばあさん、そしてなぜか女の子二人組など、多様な客層。てか駅から基地にいくまでの歩みが遅い。とにかく人。ブルーインパルスを見に滑走路のほうへ行くと、なぜかイツァーク・パールマンのヴァイオリンが聞こえる。なぜシンドラーのメインテーマをBGMにしておるのだ。

飛行機に乗りたい、船を動かしたい、そうした欲望は子供にとって至極まっとうであるけれど、特殊部隊になりたい、となるとマニアの世界だ。戦車に乗りたい、などは飛行機や船に比べて物神性が薄いというか、ぶっちゃけ陰気さが漂う。戦車はダイナミックではない。夢のある乗り物とはとうてい言いがたい。

だから航空祭は子供が多いのだろうな、と思う。ブルーインパルスの飛行は、テレビのニュースなどで見ている時分には、正直なにが楽しいのかさっぱりわからなかったけれど、生で間近にその青い機体がくるくるシザーズすると、これはものすごい迫力で、急上昇や急降下はもう背中にぞくぞくするものが走り抜けていくほどの感動。これは高く駆け上ってまっすぐに落ちてくる機体を、倒れそうなほどのけぞって首を捻じ曲げてまっすぐ上を見て眼で追うという、鑑賞者の肉体の挙動と、生の爆音によるものが大きい。煙が巨大な五芒星を描く。それがあまりに巨大すぎて将門が目覚めないかと不安になった。加藤が来るぞ。

F4などの展示も見たが、間近で軍用機を見たのもこれまた初めて。てか機体にあばたのようにびっしり書かれたインストラクションやコーションの類がおかしい。ある機体など、プロペラの一枚一枚に何行もの文字が書かれている。こんなに機体に小さな文字を書き込んで皆読んでるのか。

思い出すのはぼくが子供の頃のガンプラだ。あの頃はガンダムの脚といわず手といわず、更地があるならそこにぺたぺたとデカールを貼っていったものだ。何のCAUTIONなのか何のWARNINGなのかそもそもCAUTIONやWARNINGとはどういう意味なのかもわからずに、何をいったい整備するのかガンダムのありとあらゆる場所にメンテナンスポートとインストラクションのモザイクを貼りこんで行ったあのころ。そうすることでロボットがえらくリアルに見えたからなのだが、主目的を喪失してバロック化し、もはやデカールのステンドグラスと化したガンプラは、今思い出すに異様な代物ではあったけれど、目の前に鎮座するF4はまさにそのインストラクションのお化けだった。リアルという次元を超えて注意書きが機体にびっしり書かれている。いや、これこそ現実なのだけれど。