AVP

 狩りの、時間だ。

 だが問題は、どこで狩るかだ。

 自分が思うに、プレデターにもいろんな狩りのバリエーションがあるのだ。森派、都市派、迷路派。狩りというのは普通森でやるものなので、「1」のプレデターはノーマルな趣味の人という感じだろう。他国の文化を紹介するのに、その文化におけるイレギュラー、つまり変態を紹介したらとんでもない誤解を受けるに決まっている。日本文学を紹介するのにヤプーを読ませる馬鹿はいない。

 しかし、バロウズも言っているように、最初の1発めのハイは、2度と得られない。すべては「慣れる」。薬中は最初の1発のハイを求めて、より多くのドラッグを使おうとする。普通のプレイに飽きたカップルが野外でしたり交換したり縛ったりするように、プレデターは都市へ出た。

 都市はそれなりに複雑であり、けっこう楽しかった。しかし飽きない、飽きられないものはない。なんといっても獲物が多すぎる。そこでプレデターは考えた。マップを複雑にすべきだ。何度プレイしても楽しめるように時間軸でランダムに変化するマップにしよう。これはつまりセックスでいえば変態だ。ジャングルは飽きた。街も飽きた。じゃあ動的に生成されるランダムマップだ。というか、ぶっちゃけ人間飽きた。より強い刺激を求めて複雑なフィールドと、より難度の高い敵を求めた結果がこの映画だ。

 というわけで変型するドラえもん迷宮については変態プレデターということで納得してもらえませんかねこれ。

 というか、プレデター映画。自分はエイリアンオタですが、この映画の話ではどうしてもプレデターに感情移入せざるを得ない。「あいつは・・・完璧な有機体だ」という生存機械であるところのエイリアンというのは、非人間ゆえの美しさ、圧倒的に人間を無視して存在する無慈悲な現実であるところの美しさであって、そんなエイリアンさんに比べこれが少年マンガだったら「強敵(とも)こそが真理・・・」と人間だったらつぶやいたであろうジャンプ的強者イズムによって、それが強ければ下等生物であるはずの人間をも戦友として認めてしまうという純粋さを持った戦闘部族プレデター、というのはそもそも感動するベクトルがまったく正反対であるわけで、非常に食い合せが悪いわけです。

 この両方の美しさを一本の作品の中で両立させることは不可能であるわけで、このプレデター的純粋さを充分に表現するならば、エイリアン的純粋さというのは単なる繁殖生物の浅ましさと見えてしまうわけで、エイリアン的純粋さを充分に表現するならば、エイリアンの前では人間もプレデターも「感情」を持った生物は「生存機械」として純粋さに欠けるゆえ失格であり美しくなく卑小な弱い生物である、と描かれなければなりません。

 で、この映画がどっちをとったか、というと、完全に前者でした。

 なんだかテキトーな脚本ではありますが、プレデターと人間の間に芽生える種族を越えたつかの間の共闘関係は、なんだか「ゴースト・オブ・マーズ」のアイス・キューブナターシャ・ヘンストリッジや「要塞警察」のナポレオン・ウィルソン&ビショップ警部補みたいな、カーペンター映画を彷佛とさせるテイストで不覚にも感動してしまいました。いや、ほんとの話。

 エイリアンファンとしては悔しいものがありますが、この作劇上かなり馴染みの悪い二者を並べることが前提の企画なのですから、二者択一でばっさりエイリアン特有の美しさを切り捨て、プレデター美学を全面に押し出したジャンプ的強者(とも)イズム映画にしたことは正解だったと言えるでしょう。逆に言えばエイリアン特有の美しさを選択した場合、それは人間もプレデターも蹂躙される映画になるわけで、これってじつはジャンルとしてアクションを選択するか、ホラーを選択するか、という選択だったのかもしれません。

「目配せ」的ファンサービス、つまりスタッフクレジットはプレデター文字で映画のタイトルロゴはエイリアン方式、とか、ビショップ社長が指の間をペンでこつこつ叩いたり、とか、そういうネタには事欠きませんが、しかしここはやはりプレデターの勇姿を見ていただきたい。そして強者を認めるがゆえにエイリアンを倒したヒロインと共闘する戦士の絆。爆発の炎を背後に走り来るヒーローヒロイン、というアクション映画お約束の画ヅラが、プレデターと人間のヒロイン、というけったいな置き換えで演じられるとき画面はくらくらするようなギャグと化し、劇場に笑いをもたらすと共に、なにかすがすがしいものが観客の脳を通り過ぎてゆくはずです。この「爆発から逃れる必死なプレデターとヒロイン」が個人的にはこの映画で一番笑い感動したカットですな。

 しかし最後の長老というか長(オサ)っぽいプレデターがやたらかっこよかった。マントをひるがえして母船に歩いていくその威厳に痺れました。あの船に長老以下そうそうたる猛者クラスの戦士たちがゾロゾロ乗っているのだと想像すると興奮して夜も寝られません(嘘)

 プレデター萌え映画。