ガルシアマルケス

 ぼくはオタクなので、ファッションに疎い。ブランドとか全然知らない。電車男エルメス知らなかったみたいに。ほとんどはユニクロか無印の服で、かろうじてブランドといえるのは、店頭でかっちょいいなーと見た目で衝動買いしたポール・スミスのシャツとコートぐらい。だから、ガルシアマルケスという名前を、今日知った。この歳で。

 ガルシアマルケス。すごいブランド名だ。「ピノチェト政権下のチリに潜入していた映画監督お気に入りのバッグ!」とか「5年降り続く雨にも耐えられます!」とかイナバ物置みたいなキャッチしか思い浮かばない。

 いかん。舶来の作家にブランド名を頼っているようではいかん。そういうわけで、日本人作家をアパレル関係のブランドネームに仕立て上げる計画を立てた。まずは候補だ。

  • ユキオ・ミシマ
    • ユキオ、という響きですでに敗北している気がする。「ガ」ルシーアでマルケースな、ラテン的な荒々しさのリズムと文学的にソフィスティケートされた知的な感じ、にまるで負けてる。「お」で終わる名前はブランドとしてはどうも弱い。
  • ジュン・エトウ
    • これはかなりいい線行っているのではないか。ジュン、というのがなんとなくガーリーなポップさを想起させ、ローティーン層を狙えそうな気がする。英語で「jun」という表記が可能なところもロゴ戦略としてはアドバンテージがありそうだ。ただ、名前元の作家が作家だけに、つねにタナトスとかそーいう暗い方面にイメージがブレがちで、そこらへんがマジックリアリズムに比べて不利な点ではある。
  • ケンザブロー・オオエ
    • 「ザ」ときて「ロー」で抜ける名前は「ガ」ルシアマルケ「ス」に拮抗する響きの良さを持っているが、いかんせん「オ」が二連続する発音が駄目すぎる。論外。あと、死体洗いとか河馬に噛まれるとかロクなイメージないのも減点。
  • ヤスタカ・ツツイ
    • 個人的にはファンであるけれど、ブランドネームとしてはやはりこじんまりとした、せこせこした印象を受けるのは否めない。どうでもいいことだが、「シン・シティ」の首争奪戦のシーンを見ていて、「あ、『万延元年のラグビ−』だ」と思った。
  • ケンジ・ナカガミ
    • ケンジ、という響き。これはかなり勝ってると思う。問題は「カ」が二連発する部分だが、オオエと違ってはっきりした音の連なりなので、あまり問題はないと思う。ジュン・エトウと方向性こそ違え、かなりタメを張れるのではないか。
  • キョジン・オオニシ
    • もともとの名前の時点でお笑いめいているので論外。

うーん、こんなもんか。批評家はどうだろうか。

  • シゲヒコ・ハスミ
    • ハスミ、という響きはかなりエレガントだと思うが、いかんせんシゲヒコ、という部分がこじんまり感を与えそれを相殺。「凡庸」なデザインを大量に押し出してきそうなところもいただけない。
  • ヒデミ・スガ
    • ヒデミ、というのがいまどきのトランスジェンダーな感じを醸し出していてクールに響く。が、やはりいかんせん「スガ」では字足らずというか、奇妙な脱臼感、脱力感を醸し出してしまう。むしろ「スガ」だけで「SUGA」とかアルファベットにしてブランディングしたほうがいいかも知れない。
  • ナオミ・ワタナベ
    • これは強い。なにせナオミである。これまたトランスジェンダーな雰囲気を醸し出すことができる上、この名前の初登場は旧約のルツ記であり、ユダヤでもクリスチャンでも(たぶんモスレムでも)通じるグローバルな名前である。

 そういうわけで、私の考える日本人作家アパレルブランディング計画のネーム候補は「ジュン・エトウ」「ケンジ・ナカガミ」「ナオミ・ワタナベ」の3つまで絞られました。

 ていうか今日退院しました。シン・シティ見たのに、帰りの車内刷りでガルシアマルケスの名前を見つけてからこんなことばかり考えてました。すみません。