鉄男

アフガニスタンの山奥にいてアジア系の風貌を集めて置きながら、ハンガリー語を話す人間もいるという宗教不明イデオロギー不明の「テロ集団」、というより武装勢力というあたりが、この辺現実と切り離して愉しんでちょーだいな、という映画のスタンスを表しているあたり、されどなかなか苦しいものがある。野暮だとか何だとか言われるのを承知で、しかしもっとスマートに生臭さを敵役から抜くことはできないものか。てかそれやるとジョーカーになっちゃうんだよね。あれは悪の抽象化そのものがコンセプトの一部だった訳だけれども。

とはいえ、突っこみだしたらきりがない。特にアメリカの隣にアフガンがありそうな距離感のいい加減さとか。でもそういうのは野暮。それよりはロバート・ダウニー・ジュニア(以下RDJ)を社長にキャスティングした制作陣の英断に拍手を送るべき。麻薬に溺れ復活したRDJは「スキャナー・ダークリー」の自転車ギア話や「ゾディアック」記者の人生転落ぶりなど、一度どん底を見た男の投げやりな説得力が漲っていて、それはこの社長役でも充分発揮されている。RDJのあの喋り方がわたしは大好きだ。

個人的には至る窓にインターフェースが浮かび上がる社長の屋敷が燃える。

ラストえあっさりゲロっちゃうのはやはりRDJの40越えたオッサン特有の吹っ切れが無ければ説得力はないだろう。おっさんがおっさんと戦う映画。余りに重い傑作「ダークナイト」の後遺症に苦しめられている俺みたいな人間には、こういうのも必要だよな、と思わせてくれる肩の力を抜いて楽しめた一本でした。

あとグィネス・パルトロウがびっくりするほどかわいく撮られてた。