「今週の『インクレディブル・ハルク』は……」

多分、作り手は自覚的にやってると思うのだけれど、これは明らかに架空の「インクレディブル・ハルク」というテレビシリーズの真ん中の1エピソードとして作られている。「インクレディブル・ハルク」という架空の通常1時間枠のテレビドラマ(てかハルクは実際過去に何度かテレビシリーズになっているんだけどね)の、夏休みとか年末とかにやる二時間スペシャルとして。

それを感じたのは冒頭で、あのざっくりした基本設定の説明は続き物のテレビドラマの冒頭に毎回くっついているものだ。いつものエピソードよりは話はでかいけれど、話はこれで終わらずに「次回に続く」ようになっているのもポイントで、ちょっと説明しがたいのだけれど、これは「続編を期待させる」ような映画の締め方とはまた違う。架空の「次回」があるような終わり方とでも言えばいいのか、そういう感じで終わるのだ(アイアンマン登場は笑ったけど)。エアーウルフナイトライダーみたいに日本でで放映していたなら、この「インクレディブル・ハルク」は新聞のラテ欄に「凶悪!最強の敵アボミネーション登場!」とか書かれてそうな感じの回でしょう。テレビドラマの劇場版ともまた違う、あくまでテレビの2時間スペシャル。

あの「変身してない日数=何日」っていうテロップも、劇中じゃまったく意味ないんだけど、テレビドラマとしてなら場面転換時やCMの直後とかに入れてアイキャッチ的な役割を果たしそうだし。

で、「24」や「プリズン・ブレイク」と違って、一昔前のこういうテレビドラマってのは途中から視てもまったく問題ない。一回が一エピソードになっているから。「逃亡者」とかで言うと濡れ衣を着せられた逃亡者である主人公がある小さな町に流れ着いて、そこで事件に巻きこまれ解決する。そして最後五分くらいで正体がばれるか追っ手が掛かるかして、町の人に惜しまれながらも去ってゆく、というようになっているわけだ。そんなふうに毎回が構成されていて、少しずつ全体の話も進行してゆく。毎回冒頭で「リチャード・キンブルは〜」みたいな彼がいかにして逃亡者になったかの説明がざっくりなされる。基本的な設定の上に、一話一話にそれぞれ完結したお話が乗っかっているという作り。

こじんまりとしているんだけど、テレビドラマとしては奮発している感じの、微妙なスケール感が、そう感じさせてくれたのでしょう。いや、お金掛かっているし大作なんですけどね。そういう懐かしい感じのするテレビドラマっぽい感触が面白かったです。