リスカ王国

バレあり。

周囲の評判がえらく悪いorぱっとしない、ヘンリー・ウォルトン・ジョーンズ・ジュニア(テレビ版のお陰でロレンスからレーニン果てはカフカまで20世紀の偉人にはすべて会っていることになっている奇人)教授四度目の劇場サイズの冒険を視てきたよ。

まあ、ぶっちゃけると、ケイト・ブランシェットに尽きるわけだが。

最近のスピルバーグの妙な構成上の癖である「何故か一番の見せ場を前半部に配置する」というのは今作もそうで、ネバダテストサイトでのイニシエーションがそれにあたる。あの放射能防護服着た連中にデッキブラシで全身をごしごしされるっちゅうハリウッドのラディエーションコントロールの図、というやつが個人的には大好き(ドクター・ノオのコネリーとヒロインなんか今視るとすごいぞ)なんだが、それをきっちりおさえたスピはよくわかっているとしかいいようがない。洗浄室のプロダクションデザインもタイルとか冷戦臭くて最高。ちなみにこの冷戦風タコ部屋の場面だけなぜかカミンスキーのルック解禁。この見せ場でなにげにスピルバーグのトレードマークであるサバービア(郊外住宅地)の憂鬱をシミュラクルの形でさらっと触れているのには注目。どの作品にも一応自分のモチーフは忘れない人だね。ちなみにこの映画のキノコ雲、俺が映画で視た過去最高レベルの禍々しさで最高。

で、イリーナ・スパルコ大佐博士(コロネル・ドクター)であるが、舞台は57年、前年に大地の支配者とまで言われたルイセンコたんがソ連農業アカデミーの議長を辞任させられていることからもわかるように、すでにスターリン批判のあと、スターリンの妾みたいなこの子がこんなフリーダムに国外で活動できたかどうかは大いに疑わしい。うん。でもね、視た?この子の妙なコスチュームの背中のど真ん中。「CCCP」の文字に鎌とハンマー。しかもすごい微妙な大きさの。これみた瞬間面白くてたまらなくなりましたよ。肩でなく背中の真ん中にCCCPマークってどれだけTシャツ感覚なんだと。このバカっぽいワンポイントソ連マークの時点でもうイリーナかわいいよイリーナてなもんで、この子はもうソ連好きすぎるんだな、と。きっと本国でキルリアン写真とか暗室で自分で現像して喜んでるんだよ。黒髪おかっぱという押井女子定番ヘアでいかにもなサドっ子を演じようとしつつ、しかしキルリアン写真が好きで自分が予知能力者だと信じて疑わないビリーバー(だってこの映画で彼女が自称する能力って一回も発揮されてないじゃん!)で、(きっと)超能力スペツナズの設立とか夢見て疑うところがないオカルトっ娘がKYなインディたちの前に敗北する姿を見て涙を禁じ得ないわけだ。「ぜんぶ知りたい」っていいじゃないか!この世の知識全部授けてやればよう!冒頭の核爆発は、当たり前だけど後半の全知を欲して破滅、っていう「レイダース」とか「最後の聖戦」とかにもみられる「知識への欲望はほどほどにね」とかいうシリーズ定番のテーマに掛けてあるわけだけど、俺はしかしイリーナたんの無残な最後には涙を流しそうになったね。いや、彼女はきっと全知の場所にたどりついたんだ、だから星になったんだ、と信じたい。

なんだかよくわかりませんが、ごくごくふつうに面白かったです。イリーナは俺だけ盛り上がってました。以上。

どうでもいいが、インディの回収した聖櫃が原爆の開発に寄与した、って考えると意味もなく興奮する。そんな描写はどこにもないけど。アークにコア放り込んで未臨界実験とか。よくない?