標的は11人:モサド暗殺チームの記録

目録にあったので問い合わせていた「パルチザンの理論」は既に売れてしまっていた。ので、入手できたのは赤瀬川原平さんの「ぱくぱく辞典」と、恐らくスピの映画公開のあかつきには再版がかかるだろう「ミュンヘン」原作こと「標的は11人」だけだった。

ぼくには食事や間食の時に好んですることがある。躾がなってない話だが、家であろうと外であろうと、一人で食事するときには必ず本を読みながら食うのだ。しかも、それは大体の場合、アンソニー・ボーデインの「キッチン・コンフィデンシャル」だったり、「死んでいる」のジム・クレイスが書いた「食糧棚」だったり、単純に「美味しんぼ」や「味っ子」「大使閣下の料理人」といった料理マンガだったり、悪趣味に「ハンニバル」の最後の晩餐シーンだったり、まあ要するに食事に関する本を読みながら、昼飯だったり夕飯だったりを食べるのだ。

この「明解 ぱくぱく辞典」はその「食事のお供」としてかなり頻繁に召喚されてきた愛着のある本だったのだけど、数年前に電車の中で無くして、以来、さみしい思いをしてきたのだった。これで食事の量が増えるのも困るけど、やっとこの本が「食事のお供」の本棚に戻ってきて嬉しい。

スピルバーグミュンヘン」原作「標的は11人〜モサド暗殺チームの記録(新潮文庫)」は、いずれ映画の公開時に再版されるだろうけれど、我慢できずに古本で購入。まあ、文庫で貴重な本でもないので安いし。

まだ読みはじめたばかりなのだけれど、冒頭近く、首相ゴルダ・メイア女史が自宅の質素なアパートで、主人公と、当時陸軍少将だったシャロン(あのシャロンですよ)たちに作戦の決行を伝える、という凄まじい場面が登場し、えらく興奮する。予告編の中に出てきた老婆って、ゴルダ・メイアなのかしら。彼女自らお茶をいれて持ってくるあたりなど、ほとんど「マトリックス」のオラクルのアパートみたいで、そこで下される「イスラエルの歴史を変える」決断を考えると、この「老婆とお茶とアパートとシャロン」という組み合わせは、なかなかに壮絶な場面である。

ゴルダ・メイアって人間にちょっと興味が湧いてきた。この本で登場するのここだけだけど。というか、イスラエルの建国について自分がほとんど知らないことに今気がついた。

老いた女性が冷酷に政治的決断を下す、ってビジュアル、萌えません(笑)?