「恐怖の存在」

前作「プレイ」下巻で、物語をコーマン映画のようなグダグダB級モンスター映画(ナノマシンの話だと思って読んでたら、実は「ボディ・スナッチャー」でしたぁぁぁぁあ!いやホント、腰が抜けた。)にシフトして読者を爆笑の渦に巻き込んだクライトンの新作です。弁護士のくせにすごい無知な主人公を、MITの教授で探検家で情報戦のプロで対テロ機関のボスという無茶苦茶な万能キャラが、環境危機のウソについて解説しつつ、環境テロリストをやっつける、というなんのヒネりもない話です。

クローンとカオス、セクハラ、航空業界(これはいま、まさに現実面でジャストヒットで、先読み大王クライトンさすが、ってとこですか)、とネタに関して時代のすこしだけ(これ重要。あんま先だとアクチュアリティがなくなるから)先をネタに選ぶことにかけては並ぶことのないクライトンですが、今回はロンボルグの「環境危機をあおってはいけない」がネタ。100倍に希釈した「環境危機〜」みたいな話を、万能キャラのケナーさんが、自信たっぷりにおばかな主人公に怒濤のように分かりやすいクライトン節で語ってくれます。1次データが物凄い勢いで並ぶあの分厚い本を読むのが面倒臭い人は、この「恐怖の存在」を読んでから「環境危機〜」を読むといいかも。