デス・レース

さる方にお誘いいただいて(ありがとうござりまする)、「デス・レース」の試写会に行ってきたのだった。会場入口で渡されたチラシを見ると、製作総指揮と制作協力にロジャー・コーマンの名前が。前のってコーマン映画でしたっけ。そっかー、まだ生きてたんだね。1926年生まれだから今年82だよ。長生きはいいことだ。

映画の方は、ポール・駄目な方の・アンダーソンとか言われているポール・W・アンダーソンが監督なのだけれど、この人は「イベント・ホライズン」という傑作を撮っているし、エリプレもバイオハザードも決して嫌いではない。

しかし、エイリアンvsプレデターの「マップが変わるダンジョンが舞台って良くね?」とか、バイオハザードの「トラップがたくさんある研究所って良くね?」などと同じ、ひどいゲーム脳は今作でも相変わらずで、サーキット上の「剣」とか「楯」とかいうタイルを車が通過する(踏む)と武装や防御機能が使えるようになるというひどいF-ZERO脳にはびっくりした。

かくもゲームっぽい映画ではあっても、ポールさんは確実に上手くなっているようで、結論から言うと非常に面白かった。「バイオ」や「エイリアン〜」よりも確実に上手くなっている。1時間46分というランニングタイムも非常によろしい。こういう何も考えなくていいB級アクション映画が月一でかかって映画館に通えるような状況がぼくの理想とする映画環境なんだけど。

あと、実はジェイソン・ステイサムが大好きなのだ。髪の毛さえあれば実写版ソリッド・スネークはこの人でいいんじゃないかと思っているくらい。髪の毛さえあれば。

レースつながりな話題。聞いた話では、黒沢清さんは「スピードレーサー」でグッと来たそうだ。実はわたしも「スピードレーサー」は結構好きなのだけれど、黒沢さんがというのがよくわからない。

フェルメール展

というわけで、確かにあの人混みはどうにも嫌だと思いながらも行ってきたフェルメール展。
というのも、mixiフェルメールコミュで「割と空いている」時間帯を教えて貰ったからなのだった。

それは開館と同時、朝9時に会場へ入ることである。

たまたま、11時から放射線治療を受けることもあり、御茶ノ水に出て行かねばならなかったのだが、それならばちょっと早起きして上野まで足を運んだらええんちゃう、ということで七時半に家を出て、八時半に東京都美術館に到着、すでに並んでいる人がいるものの、割と前のほうに列べたのだった。ゲート前に列べたらこれはもう勝利。できれば前売り券を買っておくべきだったかもしれないけれど、中に入ったらそれほど混んでいなかったのでほっとした。

というわけで、ゆっくりフェルメールを見たい人は早朝も早朝、開館前に並ぶしかない、というのが実際のところ。それ以降はまともな観賞は不可能だ。というのも、ぼくが美術館を出る十時半の時点でものすごい人になっていたからだ。

さて、今回は牛乳女も耳飾り少女もなし、だけど点数だけは最大級、なフェルメール。とはいえ、フェルメールにも外れはあるわけで、実際に見てそれを感じたのが「マルタとマリアの家のキリスト」なのだった。これ実際にはでかい。物凄いでかい絵なのね。画集で見ていると気がつかないけど、縦160、人の身長くらいあるんだもん。でかい分大味というか、画集サイズで見ているときには気がつかなかった荒さがある。なんかでかい筆でべたべた塗りつけた感じ。やはり宗教そのものがダイレクトに題材になると、イデオロギーのようなものが先行してしまうのだろうか、観念の荒さというか、観念特有のディテールのなさというか、そういうものを感じる。宗教ではなく神話を扱った「ディアナとニンフたち」にはこの荒さはないから、やはりでかいのと宗教、この二点がネックになっているのだろう。

個人的には、フェルメールの快楽は窓から射し込む光の横溢でもなく、絵の中の絵といった自己言及性でもなく、服の皺の描き出す迷路のようなディテールにあると思っている。服の皺を見ているだけでうっとりする画家というのもそういない。これがレンブラントの場合は黒の黒々しさが快楽で、見る場所や快楽の源は画家によって違う。

わたしの一番大好きな「絵画芸術」は保存状態の悪化により展示が見送られていた。残念。

フェルメールを見ていると困るのは自分も絵を描きたくなってくるところである。とはいっても画材を買う気はなくてコンピュータだけれど。今使っている小さなVAIOじゃ話にならないなあ、Mac買おうかなあ、という衝動がカタログを見ているとわき起こってくるのである。実にたちが悪い。

余談

http://www.de609.com/
ディファレンス・エンジン」と「キノトロープ」というヘア&メイクの店。
ディファレンス・エンジン」は実在したからともかく、「キノトロープ」は……まあそういうwebプロダクションもありますが。名付けた人間がSFファンなのだろうか。